選挙法を学ぶ

知ることが、最大の防御。

公職選挙法の基本ルール、SNS時代の注意点、実際に起きた事件を通じて、 選挙に関わるすべての人が知っておくべき知識をまとめています。

選挙法の基本ルール

公職選挙法で定められている主要な禁止事項と基本的なルールです

選挙運動の期間

選挙運動ができるのは、公示日(告示日)から投票日の前日までです(第129条)。それ以外の期間に行う選挙運動は「事前運動」として禁止され、違反者は1年以下の禁錞又は30万円以下の罰金に処されます(第239条)。

総務省:現行の選挙運動の規制

金銭・物品の提供禁止

選挙に関連して金銭や物品を提供すること、飲食を振る舞うことは買収罪に該当します(第221条)。飲食物の提供も原則禁止されており(第139条)、受け取った側も処罰の対象です。

総務省:選挙違反と罰則

戸別訪問の禁止

投票を依頼する目的で、各家庭を一軒一軒訪問することは禁止されています(第138条)。日本独特の規制として知られています。

総務省:選挙運動の規制

年齢制限

選挙運動ができるのは18歳以上の日本国民に限られます(第137条の2)。18歳未満の者は、SNSでの投票呼びかけを含め、一切の選挙運動ができません。

総務省:未成年者の選挙運動禁止

インターネット選挙運動

2013年の法改正でウェブサイトやSNSでの選挙運動が解禁されましたが、電子メールでの選挙運動は候補者・政党等に限定されています(第142条の3・第142条の4)。

総務省:インターネット選挙運動の解禁

選挙の自由妨害の禁止

候補者の演説を妨害したり、選挙活動を暴力や威力で妨げることは、選挙の自由妨害罪として厳しく罰せられます(第225条)。

e-Gov法令検索:公職選挙法

SNS・インターネットでの選挙運動

2013年にインターネット選挙運動が解禁されましたが、すべてが自由になったわけではありません

OK

ウェブサイト・ブログ・SNSでの選挙運動

選挙期間中、ウェブサイトやSNS(X、Facebook、Instagram等)で特定の候補者への投票を呼びかけることは認められています(第142条の3)。

総務省:インターネット選挙運動の解禁
OK

候補者の政策をSNSでシェア・リツイート

選挙期間中に候補者の投稿をシェアしたり、自分の意見を添えて拡散することは適法です(第142条の3)。

総務省:インターネット選挙運動の解禁
NG

投票日当日のSNSでの投票呼びかけ

投票日当日は選挙運動が禁止されています。「○○に投票しよう」という投稿は違反になります(第129条)。

総務省:選挙運動期間の規制
NG

電子メールでの選挙運動(一般有権者)

電子メールでの選挙運動は候補者・政党等に限られ、一般有権者は行えません。なお、LINEのトークは「ウェブサイト等」に分類されるため一般有権者も利用可能ですが、LINEの「メール機能」は電子メールに該当します(第142条の3・第142条の4)。

総務省:電子メールの規制
NG

SNSで報酬をもらって候補者を応援する投稿

報酬を受けて選挙運動を行うことは買収罪に該当する可能性があります。インフルエンサーへの依頼も同様です(第221条)。

総務省:選挙違反と罰則
NG

18歳未満の者による選挙運動のSNS投稿

18歳未満の者は選挙運動を行うことができません。SNSでの投票呼びかけも含まれます(第137条の2)。

総務省:未成年者の選挙運動禁止
OK

投票日当日に「投票に行きました」と投稿

特定の候補者名を挙げず、投票に行った事実のみを伝えることは選挙運動には該当しません。ただし候補者名を挙げると違反の可能性があります。

読売新聞:投票日のSNS投稿
NG

候補者のウェブサイトを印刷して配布

ウェブサイトの内容を紙に印刷して配布することは、文書図画の頒布として規制の対象になります(第142条)。

総務省:文書図画の規制

注意

上記は一般的な解釈に基づく参考情報です。 個別の事案については、選挙管理委員会や弁護士にご相談ください。 特にSNSの機能は日々変化しており、「電子メール」と「ウェブサイト等」の区別が 曖昧なケースもあります。迷った場合は、行動を控えることをお勧めします。

最近の注目事案

実際に社会問題となった選挙法違反事案を知ることで、何が問題になるのかを理解しましょう

2026年若者が巻き込まれた事例

入江伸子容疑者 — 運動員買収で逮捕

2026年衆院選で東京7区から出馬し落選した元都議会議員が、ビラ配りなどの選挙運動の報酬として10代〜20代の若い女性5人に現金計27万円を支払った疑いで逮捕されました。SNSマーケティング会社代表が日当1万円で運動員を集めていたとされ、全体で10人以上に少なくとも45万円が渡った疑いがあります。若者が「アルバイト感覚」で選挙運動に参加し、意図せず違法行為に巻き込まれた典型的な事例です。

関連法令:公職選挙法 第221条(買収罪)

2025年組織の法令遵守

上野賢一郎衆院議員の公設秘書 — 公民権停止中の選挙運動

自民党・上野賢一郎衆院議員の公設秘書が、2024年衆院選での運動員買収により公民権停止5年の処分を受けていたにもかかわらず、2025年参院選で候補者のそばに立って手を振るなどの選挙運動を行い、書類送検されました。議員本人は「公民権停止は知らなかった」と説明。組織としての法令遵守体制の不備が問われた事案です。

関連法令:公職選挙法 第137条の3(公民権停止中の選挙運動の禁止)

2024年SNS時代の新たな問題

兵庫県知事選 — SNS・PR会社問題

知事選においてPR会社がSNS戦略に関与し、その対価が選挙運動の報酬に該当するのではないかが問題となりました。PR会社社長が選挙後にSNS戦略を担当したと投稿し、2025年6月に知事とPR会社社長が買収容疑で書類送検されました。その後、2025年11月に神戸地検は両名を不起訴処分としています。インターネット選挙運動における「報酬」と「業務委託」の境界線が社会的に議論されるきっかけとなった事案です。

関連法令:公職選挙法 第221条(買収罪)

2024年選挙妨害

つばさの党 — 選挙妨害事件

2024年衆院補選(東京15区)で、他の候補者の街頭演説に拡声器で大音量の妨害を行い、街宣車を車で追いかけ回す行為を動画配信しました。代表ら3人が逮捕・起訴され、警視庁が特別捕査本部を設置する異例の事態に。選挙運動の自由と妨害行為の境界について、改めて社会的な関心が高まった事案です。

関連法令:公職選挙法 第225条(選挙の自由妨害罪)

2019年大規模買収

河井夫妻 — 大規模買収事件

参議院議員選挙に関連し、元法務大臣・河井克行氏が地方議員ら約100人に対して計約2,900万円を配布した大規模な買収事件。公職選挙法史上最大規模の買収事件として、選挙における金銭のやり取りの重大さを示しました。克行氏は懲役3年の実刑判決を受けました。

関連法令:公職選挙法 第221条(買収罪)

若い世代の皆さんへ

政治に関心を持ち、選挙に関わることは素晴らしいことです。 しかし、「アルバイト感覚」で選挙運動に参加したり、 SNSで安易に報酬を受けて応援投稿をしたりすることは、 重大な法律違反につながる可能性があります。

入江伸子容疑者の事件では、10代〜20代の若い女性が 「日当1万円」でビラ配りに参加し、結果として買収事件に巻き込まれました。 報酬を受け取った側も処罰の対象になり得ます。

「お金をもらって選挙の手伝いをする」という話には、十分に注意してください。 少しでも不安を感じたら、 選挙管理委員会や弁護士に相談しましょう。